タイガー&ドラゴン 「子は鎹」の回
演出:金子文紀
脚本:宮藤官九郎
竜二(岡田准一)がオープニングを務め、
虎児(長瀬智也)が出所を迎える3年後の話であること、
林屋亭一門が協会を脱会して寄席に出られない状況であること、
自分がどん兵衛を襲名する予定があることなどを説明して始まった最終回。
やっぱり泣き所は満載だった。
新宿流星会の二代目として
すっかり本物のヤクザになっていた銀次郎(塚本高史)が、
“似合わねえことしてんじゃねえ!”と
虎児を追い返すところがまず泣けた。
3年前は一緒にウルフ商会に乗り込んでくれて嬉しかったこと、
本当はアニキに代わってもらいたいくらいだけど、
アニキはもう堅気の人間で、立派な噺家であること、
だからもうこっちの世界に足を踏み入れて欲しくないこと、
そういう銀次郎の複雑思いが銀次郎なりのやり方で表現されたシーンで、
ここはやたら泣けた。
クチでは虎児のことを悪く言っても
内心は一番虎児に帰ってきて欲しかったどん兵衛(西田敏行)が、
すべての気持ちを掃き出す組長(笑福亭鶴瓶)とのシーンも感動的だった。
“あんたのせいだろ!
あんたらヤクザが、ウチの小虎を、可愛い弟子を、
つまんねえ争いに巻き込んだからでしょ!
だからいないんでしょ!”
“ワシも迎えに行きたかったんやけど、
アイツはどんちゃんに譲ったやろ。
そやから行かれへんかったんや”
この2人の父親が
血のつながらない息子を思って泣く姿は感動的だった。
ストーリーはこのどん兵衛と虎児の関係を中心に
「子は鎹」で集結していく。
途中、おとっつぁんって言ったら前に這い出してきたな、
という部分をきちんと印象づけさせてあったおかげで、
喫茶店で竜二が師匠という言葉を言った途端に
虎児が前に這い出してくるところはもう泣き笑いだった。
この喫茶店のシーンも良かったな。
立場が逆転した2人の気持ちがせつなく描かれていて。
で、唐突に語り出した虎児の落語が
またうまくなってんだよね、いろんな意味で。
ここはすごく説得力があった。
虎児が高座でやった「子は鎹」のオチが
多少ゆるかったのは残念。
でも最後の“タイガータイガーじれっタイガー”で
すべての人の気持ちが表現できていて
印象深いラストシーンだった。
全編を通して描かなければいけない要素がたくさんあったので、
落語に詳しいか詳しくないか、
宮藤官九郎のノリにハマれるかハマれないかなどで、
評価は分かれる作品だったかもしれない。
でも、落語にも描かれる人間の情のようなものを
本当にストレートに表現した名作だったと思う。
落語のストーリーとドラマのストーリーをリンクさせるという
そのアイディアを提示しただけでなく、
きっちりと作品にした宮藤官九郎の筆力もすごかったと思う。
まったくアラがなかったわけではない。
でも、ここまでのクオリティーで仕上げてくれたら
十分に満足だった。
結局、ドラゴンソーダが流行って
借金は返済したことになってしまったけど、
虎児は刑務所で「寝床」「死神」「目黒のさんま」「ねずみ」
「道具屋」「時そば」「居残り佐平次」「火事息子」「火焔太鼓」など、
100を超える落語を覚えたと言っていた。
続編か、スペシャルか、映画か、
またいつか同じスタッフとキャストで見てみたいと思う。
採点 8.0(10点満点平均6)
脚本 ★★★★★
演出 ★★★★★
配役 ★★★★★
主題歌 ★★★★★
音楽 ★★★★☆
新鮮さ ★★★★☆
話題性 ★★★☆☆
平均採点 7.68(10点満点平均6)
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