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2008/03/30

ちりとてちん  全26週・151回

制作統括:遠藤理史
演出:伊勢田雅也、勝田夏子、井上剛、菓子浩、三鬼一希、
   吉田努、末永創、櫻井壮一、周山誠弘、橋爪伸一朗
作:藤本有紀
音楽:佐藤俊彦
語り:上沼恵美子
制作:NHK大阪
出演:貫地谷しほり、和久井映見、青木崇高、渡瀬恒彦、佐藤めぐみ、
   桂吉弥、茂山宗彦、加藤虎ノ介、松重豊、江波杏子、米倉斉加年、
   京本政樹、原沙知絵、橋本淳、宮嶋麻衣、桑島真里乃、松尾貴史、
   キムラ緑子、木村祐一、田実陽子、川平慈英、渡辺正行、友井雄亮、
   生稲晃子、久ヶ沢徹、松永玲子、竜雷太、藤吉久美子、辻本祐樹、
   桂よね吉、波岡一喜、林家染丸、芝本正、五木ひろし、森田直幸、
   榎田貴斗、押元奈緒子、村上佳子、和田はるか、中井飛香、
   星野亜門、佐藤初、小阪風真、伊藤千由李、他

シリーズ通算77作目の朝ドラ。
最初は「タイガー&ドラゴン」の上方版かと思ったけど、
じつに丁寧に組み立てられた、
ひとことで言えば傑作だった。

確かに落語の内容に沿ったストーリーは多かった。
でも、それが大小幾重にも重なった構成になっていたところは
本当に見事だったと思う。
しかもその重ね方の妙は落語ネタだけでなく、
ラストシーンの分娩室前の「愛宕山」まで、
すべてに貫かれていたと思う。

福井県・小浜を中心とした若狭塗り箸と
大阪を中心とした落語の重ね方もムリがなかった。
“研いで出てくるのは塗り重ねたものだけ。
一生懸命生きていれば、
悩んだことも落ち込んだことも綺麗な模様になって出てくる”
というのは全編に貫かれたテーマだったけど、
その軸がしっかりしていたので、
塗り箸職人の家に生まれたコンプレックスだらけの喜代美(貫地谷しほり)が
大阪へ出て落語家の修業をするという話にもブレが出なかった。

人から人へ伝え続けていくことも大きなテーマになっていたので、
登場人物の関係は、師弟、兄弟弟子、そして親子が多かったわけだけど、
そこもまたうまく小浜と大阪を重ねていたと思う。

師弟関係であり、親子でもあった
草若(渡瀬恒彦)と小草若(茂山宗彦)、
正太郎(米倉斉加年)と正典(松重豊)の対比、
兄弟弟子の関係だった
草々(青木宗高)と小草若(茂山宗彦)、
秀臣(川平慈英)と正典(松重豊)の対比なども、
小浜と大阪をうまく繋げていた。

あと、細かいことだけど、
正典と糸子(和久井映見)、草々と喜代美という
小浜と大阪の夫婦の見た目ね。
背の高さの違いが同じようなバランスで、
そこも美しく対比してあったと思う。

草若が亡くなったあと、
草原(桂吉弥)、草々、小草若、四草(加藤虎ノ介)、喜代美が
草若の落語をどう守っていくか考えていく終盤に入る前、
秀臣もまた正太郎の弟子であり、
伝統の塗り箸を守るために秀臣なりに頑張ってきたことが描かれるところも
すごくうまく構成されていたと思う。

あそこは小梅(江波杏子)の気持ちにもスポットが当たったけど、
小梅も職人の家を守るおかみさんであり、
正典と同じように秀臣を息子と思って接してきたことが分かる展開は
本当に見事だったと思う。

あのあたりはエーコ(佐藤めぐみ)も見せ場だった。
当初、エーコは単に
コンプレックスを持つビーコ(貫地谷しほり)の対象として
出しているのかと思っていた。
だから終盤にビーコがエーコと本当に向き合える時が来て、
そこがビーコの成長を描く山場になるはずだと
勝手に想像していたので、
途中でエーコが離脱した時はかなり面食らった。

でも、実際はそんな単純なものではなく、
エーコもまたビーコと同じように悩み、落ち込むひとりの女性で、
塗り重ねてきたものが後になって
綺麗な模様になって出てくる主人公のひとりだった。

もちろん、喜代美と清海(佐藤めぐみ)は
落語における喜六と清八を意識した設定だったわけだけど、
清海の使い方もこのドラマはうまかったと思う。


そんな清海の離脱と喜代美・草々の結婚で
大きくストーリーが動いた年末年始。
この時点で喜代美が結婚したということは
喜代美がおかみさんになることが
ドラマの最終地点であることは想像できた。

でも、そこをどう盛り上がるんだろうと思っていたら
最終週はまたうまく重ねてきた。

不器用で間の悪い、いつも脇役のビーコ、
というのが喜代美の大きなコンプレックスで、
その象徴として高校時代の学園祭、
舞台に上がれずスポットライトを人に当てるだけの仕事が
前半で描かれていたわけだけど、
それと同じ状況が「ひぐらし亭」の初日にやってきて、
舞台を見て笑っている母・糸子(和久井映見)を見ながら
自分が本当に何になりたいのか気づくという展開は、
伏線の最後のまとめとしてかなり効果的だったと思う。

このドラマは人から人へ伝えていくという大きなテーマを
師弟関係だけでなく、親子関係も軸にして描いていたので、
草々が小草々(辻本祐樹)という弟子を取って
喜代美がおかみさんになるだけではやはり弱かった。

子供ができて、母親の生き方を初めて客観的に見ることができて、
喜代美が糸子のすべてを受け継ぎたい、
お母ちゃんみたいになりたいと思う部分は必要だったと思う。

しかも、その生き方は喜代美がずっとコンプレックスを感じていた
人にスポットライトを当てる生き方で、
その人を照らして生きる人生がどんなに素晴らしいか、
どんなに豊かであるかに気づいて、
コンプレックスを乗り越えることと
母親=おかみさんになる決意、
その両方を同時に描いた展開はやっぱりうまかったと思う。

“ぎょうさん笑って生きていき”というのは
正太郎から喜代美への遺言で、
喜代美はその約束を守ることを心に誓っていたわけだけど、
確かに糸子もぎょうさん笑って生きてきたからなあ。

正直言えば、最後は少しバタバタした感じもあった。
とくに25週から最終週はまた時間が飛んだので、
13年間、女流落語家として頑張った喜代美の活躍は
あまり描かれなかった。
もう少し喜代美が落語家として成功した姿が見られていたら
最後の決断ももっとストレートに入ってきたと思う。
そういう意味ではせめてもう1週あったら、
という気がしないでもなかった。

でも、逆に言うとそこはリアルだったかもしれない。
第11週でまだ年季明けしてない若狭(貫地谷しほり)が
“上方落語の女性の噺家として5本の指に数えられる…”
と言って客を笑わせていたけど、
あれはそんなに女流落語家がいないからウケたわけで、
若狭が成功した様子を大袈裟に描かなかったのは
それはそれで正しい選択だったかもしれない。


で、最終週に改めて思ったのは、
糸子がいかに強力なキャラクターであったか、ということ。
喜代美と草々が結婚して
草若の弟子たちの話が多くなってきてからも
もちろん十分に面白かったんだけど、
糸子の出演が多かった前半は
週の初めに爆笑し、週の終わりに号泣する連続だった。
それを最終週でまた味わえたのは、
糸子の存在の大きさの証明でもあったと思う。

まあ、キャラクターの話をしだしたらキリがないくらい
全員が良かったんだけど…。

草若の弟子たち5人のバランスも絶妙だった。
落語を演じるシーンになると
さすがに本職の桂吉弥がずば抜けてうまかったのは歪めないけど、
他の役者も個性を活かして頑張っていたと思う。
最後の方は5人並ぶとそれだけでもう格好良かった。

あと、個人的には順子ちゃん(宮嶋麻衣)が好きだったな。
前半はとくにエーコとビーコの関係が軸になっていただけに
順子のキャラクターは貴重だった。
演じた宮嶋麻衣もすごく良かったと思う。
こういう人は息の長い女優さんになって欲しい。

とにかく脚本の完成度はビックリするくらい高い、
また最初から全部見たくなるような朝ドラだった。

            採点 9.0(10点満点平均6)

                脚本  ★★★★★
                演出  ★★★★★
                配役  ★★★★★
                音楽  ★★★★★
                新鮮さ ★★★☆☆
                話題性 ★★★☆☆


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コメント

こんばんは、いつかもコメントさせていただいたごたるです。

とうとう終ってしまいましたね。本当に温かくて、じんと心に残るお話でした。
私もあげたらキリがないほど大好きなシーン・キャラ・名言がたくさんあります。
順ちゃんの決意の回の15分一本勝負もとても素晴らしかったですね。

関東での視聴率は残念な結果になってしまったようですが、
朝向きではないほどの内容の濃さがそうさせてしまったのでしょうね。
張り巡らされた伏線の数々に、後半の見事な回収劇。
あまりに見事すぎて、前回の朝ドラが私的にはダメダメだったことまで
伏線だったのかと思ってしまうほどでした(笑)
でも本当に。主人公が何でもかんでも解決しなくてもいいのだと。
ビーコの言葉が一つのきっかけではあったけれども、
エーコが自分の力で立ち直っていくところなんかとてもよかったです。
「主人公の笑顔にはかなわないや」みたいな訳のわからない理由なんかで解決せずに。(クドい)

関西地区ではスピンオフが決まったようで、またまたこれもちりとてファンの熱い要望によりエリア拡大になることを願って、その時はまたレビューを心の隅で期待しています(^-^)

あと生意気ですが、純子->順子ちゃん、清美->清海ちゃんですね。
スミマセン!

投稿: ごたる | 2008/03/31 22:42

コメント、ありがとうございます。

前回の朝ドラの方が視聴率が高くて、
今回の方が低いというのが、
テレビの現実を表していてちょっと面白いですね(笑)

まあ、NHKは視聴率を気にせず、
いいものだけを作ってもらいたいものですが…。

表記の指摘、ありがとうございます。
訂正しておきます

投稿: ロビー | 2008/04/01 06:17

9ポイントですかぁ。なるほど、うなづけます。
「ちゅらさん」以来の完成度の高い朝ドラだったかもですよね。
ひとつだけ残念だったのは、草若師匠の落語がもっとうまければ。。。。。。(^^;

投稿: | 2008/04/07 16:35

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